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第3回 発達障害の子どもとの接し方1 ~理解の仕方と基本的な接し方~

落ち着きがない、お友達とトラブルばかり起こす、言葉がなかなか出てこない、など「もしかして発達障害かも」と感じるお子さんとどのように接したら良いのか、どんぐり発達クリニック院長の宮尾益知先生にうかがう5回シリーズ。
第3回となる今回は「発達障害の子どもとの接し方1 ~理解の仕方と基本的な接し方~」についてご紹介します。

取材・文/野中真規子

PROFILE:
宮尾益知(みやお・ますとも)先生

医療法人社団益友会 どんぐり発達クリニック理事長。ギフテッド研究所理事長。徳島大学医学部卒業後、東京大学医学部小児科、ハーバード大学神経科研究員、独立行政法人国立成育医療センターこころの診療部発達心理科医長などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックを開院。発達障害の分野での第一人者であり、関連著書も多数。近著は「子どものADHD早く気づいて親子がラクになる本」「ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 女性の発達障害: 女性の悩みと問題行動をサポートする本」(河出書房新社)など。
医療法人社団益友会 どんぐり発達クリニック
オーク発達アカデミー

子どもの特性のチェックポイント

発達障害の子は、うまくいかないことに対して叱られるなどの経験を積みやすく、自分に自信を持ちにくい傾向にあります。しかし上手に育ててよいところを引き出せば、世の中の大きな財産となるような可能性を秘めています。
自信を持って、自分なりのライフスタイルを確立できるようにしてあげたいものですね。

子どもは誰でも3歳までは自分勝手なふるまいをするものですが、それは人の気持ちを理解する力や自己コントロール能力が育っていないのが理由です。
この場合は大人がルールを作ってあげ、その通りに促せばよいのです。しかし4~5歳になると、発達障害の子どもも含めて、ある程度は相手の気持ちを理解したり、自己コントロールができるようになりますので、それを積極的に教えてあげましょう。

保育士さんが発達障害の子どもとの接し方のコツを知る前に、まずは子どもの特性を理解してあげることが必要です。一般に、以下のようなことを見極めていくと、その子とどのように接するとうまくいくのかがわかるようになります。

  • 絵や写真などビジュアルのほうが理解できるか、言葉のほうが理解しやすいか
  • 順序立てて考えるタイプか、全体をまず把握するタイプか
  • 記憶力がいいか、悪いか
  • 行動や動作が速いか、遅いか

こうしたことをチェックした上で、たとえば言葉よりも絵や写真などビジュアルのほうが理解できると気づいた場合は、何かを説明する際、言葉ではなくビジュアルを見せながら教えると、スムーズに理解できるでしょう。やるべきことを順序立てて説明しても理解しにくい場合は、まず全体像を説明してから話すといいですね。

記憶力が悪い子どもなら、こまめに説明するか、貼り紙などでたびたび注意を引くとよいでしょう。また行動が遅い子どもなら、動きに合わせて必要な物を配置しておくなど動線をしっかり作ってあげることも大切です。

わかりやすくものごとを説明するには?

説明する場合は、まず子どもがこちらにちゃんと注目しているかどうかを確認しましょう。
教えるときは、できるだけ具体的に、必要に応じて図などを使うとわかりやすくなります。

また発達障害の子どもは、人の気持ちを声のトーンで判断しますから、できるだけ平坦な話し方をしたほうがいいでしょう。
語尾のトーンが上がる話し方や、かん高い声だと叱られていると感じてしまうこともあります。

してほしくないことをやめさせるには?

友達を叩く、壁にいたずら描きをするなど、してほしくないことをやめさせたい時はむやみに禁じるのではなく、以下のような方法を試してみましょう。

ひとつは、どれだけそれをしないことが得かを教えること。
たとえば友達の顔を叩くなら「友達の顔には、ほほ骨っていうとがった骨があるから、叩くと君の手が痛くなるよ。叩くなら肩を叩いてあいさつしようか」と促してあげます。
するとその子は、自分が痛い思いをしたくないので、友達の顔を叩くことをやめるでしょう。

やってもいい場所や時間を決めることも有効です。
たとえばいたずら描きをするなら、描いてもいい壁を決めて紙を貼っておき、思う存分に描かせる、または時間を決めてその時だけ描かせるルールにすると、描いてはいけない場所や時間にはいたずら描きをやめるでしょう。

否定するのではなく、失敗経験を減らす工夫を

何か失敗した時に、叱られたり、否定されたりするだけで終わると、想像力の乏しい子どもはどうしたらよいかわからなくなってしまいます。
本人の行動や言動を頭ごなしに否定するのではなく、話をよく聞くことも大切です。そうして「そうだね」と受け入れた上で、「だけどこうしたほうが、あなたにとっては得だったよね」などと、どうすれば自分にとってよい結果になったのかを教えてあげるといいのです。

あらかじめ子どもの失敗経験を減らす工夫も大切です。
たとえば入ってはいけない部屋がある場合は「この部屋に入ってはいけないよ」と言うだけだと、その子はどうしたらいいかわからずパニックになってしまいます。
「この部屋には入れないから、お昼寝の後は隣の部屋に行こうね」と促してあげると、その子はその通りにするでしょう。
良い行動ができた時には十分にほめたり、だきしめるなどしてごほうびをあたえることも大切です。

環境調整

子どもが落ち着いて過ごせるよう、園での環境や生活スタイルをととのえることも大切です。

まず1日の行動に合わせた動線を作ってあげること。
たとえば外遊びから帰って手を洗った後、手を拭くタオルをそばにかけておく。その先に給食を食べるテーブルを置き、食べた後は子どもがお皿を下げるためのトレイを用意しておく。その先に着替える服の置き場所を作り、着替えた後は昼寝に入れるよう、ふとんを敷いておく、など。
子どもが戸惑わないよう、家具の配置や道具の置き場所は固定することも大切です。

また、物が置いてある場所に理由をつくることも有効です。
たとえば服のしまい方は、大人の都合だと引き出しの形などに合わせますが、子どもにわかりやすくするためには、上から帽子、シャツ、ズボン、靴下と、体のパーツの順番に合わせて入れておくといいでしょう。かごなどに入れる場合は奥から手前にかけて、帽子、シャツ、ズボン、靴下と入れてもよいと思います。

なお家庭と比べて、そもそも園は行動する場所や時間、順番などルールとして決められていることが多いのですが、こうしたルーチンな生活を送ることで、発達障害の症状が軽くなることもあります

時間の感覚を教えるために

時間の感覚がつかみにくい子どもには、作業の行程を15分単位にすることをおすすめします。
工作、体操などはすべて15分で区切り、子どもが時間の感覚をつかんだら、もっと時間をかけることは30分、45分と15分単位で長くしていくと、集中して取り組みやすくなります。

いやがることも、ある程度トライを

子どもがやりたがらないこと、苦手なことをすべて排除してしまうと、可能性を狭めてしまうことになります。時にはトライさせてみましょう。すると、気分の変化に応じてできたりするものです。
できた時には思い切りほめてあげましょう

次回のテーマは「発達障害の子どもとの接し方2 ~個別のケースへの対応方法~」です。

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