第4回 乳児と上手にコミュニケーションする方法

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保育士の職場の悩みナンバー1は「コミュニケーション」。上司や同僚、保護者、子どもなど、世代や立場の違うさまざまな人と上手にコミュニケーションをとるには、どうしたらよいのでしょうか。保育・子育てアドバイザーの松原美里先生にお話しをうかがう四回シリーズ、最終回となる第四回は「乳児と上手にコミュニケーションする方法」をご紹介します。

取材・文/野中真規子

PROFILE:
松原美里(まつばら・みさと)先生

保育園、児童養護施設で保育に携わる中で、保護者をサポートする必要性を感じ、退職。コーチング、心理学、NLPを学び、2007年よりウメハナリレーションズを設立。保育の視点を子育て支援に生かす講座や監修などを行う。2008年からは保育士向けコミュニケーション講座を主催。2011 年より認定こども園エクレス「エクレス子どもの家保育園」の施設長を兼任。現場での体験をもとに、コミュニケーション・コーチング・システム思考などを織り交ぜた研修を、保育士・施設長向けに行っている。また保育を通じて、地域が子どもに与える影響の大きさを痛感し、地元・網走の魅力を発信する市民活動「LOVEあばしり」を主催。年二回のワールドカフェや、網走と東京をつなぐ流氷ツアーの主催なども行っている。

★8月16日(土)18:00~20:00
「新人さんのための『動ける』&仕事の見通しが立つ保育講座」
★11月5日(土)・12日(土)9:00~16:20
「保育コミュニケーション」
★12月9日(土)18:00~20:00
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0歳児は「大人が自分をどう見ているのか」をよくわかっている

言葉が話せない乳児とのコミュニケーション。こちらの言うことをわかっているのかわかっていないのか判断ができない乳児に対して、どう接していいのか迷っている保育士さんもいるかもしれませんね。
しかし、乳児は大人が思う以上に、いろいろなことがわかっているものです。たとえば生後半年の子も、相手との関係性によって態度が変わります。
ですから、普段から「赤ちゃんだからわかっていない」という接し方をしている保育士さんには、子どもも「この先生はわかっていないと思っているな」と甘くみられ、そのような態度でふるまわれるようになります。
反対に子どもの様子を見守ってくれ、いいことはいい、いけないことはいけないと教えてくれる保育士さん、つまり子どもとしっかりと向き合ってくれる保育士さんのことを、子どもは信頼するのです。

赤ちゃん言葉は不要。状況をくわしく説明してあげて

乳児だからといって、赤ちゃん言葉で話しかける必要はありません。
ただ認識力がまだ少ないので、教える時は、なぜなのか、そうするとどうなるのか、きちんと説明してあげましょう。
たとえば電気コードをかじるクセをやめさせたいなら「コードは食べ物じゃないよ。お口に入れるとビリビリしちゃう(感電する)ことがあるんだよ」などと、目を見てしっかりと言い聞かせましょう。
まだ言葉が話せない子どもは言葉の貯金箱に言葉をためている段階であり、こうしていろいろな言葉を聞かせているうちに、貯金箱がいっぱいになり、言葉が出てくるようになります。

やめさせたい行動は、本気で「いけない」と伝えよう

0歳や1歳でも、お友達にかみついたり、人のおもちゃを取るなど、トラブルを起こすこともあります。
そういう時に、「どうせ叱ってもまだわからないから」と真剣に受け止めずに流してしまうと、子どもは学ぶ機会を逃してしまいます。
私は、トラブルがあった時には、感情で怒らず、静かにしっかりと目を見て「いけないよ」と教えていました。すると、子どもは目をそらして泣き出すことがありましたが、それは「分からないだろう」と思っている保育士をごまかす時の泣き方ではなく、叱られた悲しさとともに、「いけないことなんだ」という気づきなど、心の動きが伝わるのが伝わる泣き方でした。
大人が本気で接すると、0歳や1歳の子どもにもちゃんと伝わるのです。

保育士の接し方次第で、子どもの可能性を伸ばすことができる

0歳児でも高月齢になると、椅子に座って給食を食べたり、子どもによっては片付けなどもできるようになります。「赤ちゃんだから何もできない」と思い込んでなんでもやってあげるのではなく、できることを見極めて、少しずつやらせてあげると、子どもの能力はどんどん伸びていくでしょう。
私が携わっている保育園の卒園児には、スノーボードの世界大会に出場した選手がいます。
活躍を保育園にかかわるみんなで応援したり、成長していく過程をほほえましく振り返るのは、保育者冥利に尽きることです。
日々の保育は忙しいですが、かかわった子が将来どんな風に育つんだろう?と想像しながら接すると、やりがいを感じるし、楽しくなりませんか?
保育士の個性の分だけ、子どもたちの世界も広がります。

保育士の仕事は、子どもの未来と日本の社会を作るもの

私は、保育士の仕事は、子どもの未来を作るもの、つまり日本社会の未来を作るものだと思っています。
人間関係の閉塞感から保育の限界を感じ、保育士の仕事がとても小さいものに思えたり、誇りが持てないと感じてしまう人も少なくないようです。
私自身も保育士時代は、社会のほんの片隅を生きるような仕事だと思い込んでいました。
しかしコーチングや教育を学び、いろいろな業界の人と接する中で、幼少期の関わりの重要性を教えていただくことも多く、あらためて保育士の仕事は素晴らしいと感じることができました。
視野を広げることが保育の見方を広げることにもつながります。さまざまな人が集まる会や習い事・講座などに参加して、職場以外の人と触れ合ってみませんか?
きっと、新たな発見から保育のまなざしが深まることでしょう。


さて、このシリーズでは四回にわたってコミュニケーションのコツをご紹介してきました。コミュニケーションは苦手だと思う方も多いかもしれませんが、お互いを知り、思い合うことは本来楽しいものです。
最初は難しいかもしれませんが、第一回第二回第三回でも書いたように、相手に心の矢印を向ける意識を持ちながら接していくことで、だんだんとスムーズにできるようになりますよ。

今回でこのシリーズは終了です。ご愛読ありがとうございました。

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