心を育てる読み聞かせ術~第5回 甲斐恵美先生(3)/「くり返し」を楽しむ意味

431秒で読めます

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子どもたちは気に入った本が見つかると、何度も何度も読み聞かせをせがみます。同じ内容の同じ絵本を、同じように読んでもらっておもしろいの?と、つい考えてしまいがちですが・・・。「そんなリクエストに応えることで、子どもの読書の世界がどんどん広がるんですよ」と甲斐先生。

さて、子どもたちはなぜ、同じ本を選んでくるのでしょうか。

取材・文/乾 夕美

甲斐 恵美(かい・えみ)先生

千葉県市川市にある北国分の「風の谷こども園」「さかえ・こどもセンター」副園長。
認定こども園である「風の谷こども園」で現役保育士として務めながら、千葉県保育専門指導員として後進の指導にもあたる。また、園内に併設の「さかえ・こどもセンター」で、妊産婦対象の子育て講座、保育園の給食試食会、お母さんの息抜きタイムをプレゼントする会『アンティマミー』、自治体のファミリーサポート活動の講演など、地域の子育て支援活動にも長年携わる。

『風の谷こども園』ホームページ

もしろすぎて、止められない!?

おとなにとっての読書は、読んだものから学ぶ、ためになるから読むという目的が大きいですが、幼い子どもたちにとっては、まったく逆。学ばせようとして読み聞かせた本になんて、見向きもしません。子どもたちの関心は、その本をおもしろいと感じるかどうかだけ。おもしろい絵本は、何度でも見たい! 聞きたい! ただそれだけです。だから、子どもたちが同じ絵本を繰り返し手に取ったなら、それを楽しんでいる証拠なんです。

たとえば、いたずらを考えてみてください。子どもたちはいたずらが大好きでしょう? 叱られても叱られても、同じいたずらを繰り返すでしょう? おもしろいからなんです。いたずらをしたときの先生やお母さんの反応も、おもしろ過ぎて、もう一度見たくなって止められない。

絵本の読み聞かせも同じことなんです。「先生、この本もう一回読んで」と持ってくるのは、一度読んでもらった時の体験が楽しかったから。お話そのものが気に入ったことももちろんのこと、部屋で読んでもらっているときにお友だちの一人が発したひと言、みんながワーッと一斉に盛り上がった場面、そして先生の間の取り方なんかも、全部ひっくるめての「もう一回読んで」なんですよ。

繰り返し」におすすめの二冊


「わたしのワンピース」
にしまきかやこ・作
こぐま社

この『わたしのワンピース』は、そんなふうにリクエストされることの多い一冊です。うさぎさんがミシンで縫った白いワンピースが、それを着て出かけた先々で、お花や小鳥さん、雨粒など、うさぎさんが目にしたものの模様に変わっていきます。
乙女チックな挿し絵で女の子が好きそうな雰囲気ですが、意外や意外、男の子も大好きなんですよ。真っ白な生地が次々に変化していく様子が、みんなの想像力をかきたてるんでしょうね。
うさぎさんの「わたしににあうかしら」というセリフの後、子どもたちから「にあう~」という合いの手が入るのも、楽しみの一つです。


「まゆとおに」
富安陽子・文 降矢なな・絵
福音館書店

もう一冊、『まゆとおに』は、やまんばの娘まゆと鬼の掛け合いがユーモラスな物語。まゆを食べようと画策する赤鬼が、純粋で明るく礼儀正しいまゆの思わぬ行動に振り回されてやけどを負い、そのことがきっかけで最後は友達になります。悪者の代表のような鬼を、まだ子どもであるまゆが知らず知らずにやっつける痛快さが、ワクワク感を誘うのでしょう。
この絵本はシリーズものであと二冊出版されています。このお話をきっかけに、他の本にも興味を持ち、読み進めていく子も多いですね。
自分にとってのお気に入りの主人公が活躍するシリーズが見つかるというのも、絵本の一つの楽しみ方だと思います。

み聞かせは無限の想像力を育む

アニメやゲームのキャラクターや戦隊もの、動画など、こちらに向けて一方通行で流されてくるものが、身の回りにあふれています。社会がもうそうなってしまっているので、それは仕方ないけれど、だからこそオーソドックスな絵本の魅力に立ち戻ってみてほしいと思いますね。
キャラクターは形が決まっているけれど、絵本の世界は自由に、誰にも邪魔されずに世界をどんどんふくらませていけます。
2歳くらいの子どもたちはみんな、アンパンマンの真似をしてマントをつけるでしょう。子どもは共感したものを真似したくなるんです。
そんな想像して表現する子どもたちの豊かな力を、絵本の読み聞かせを通じてグングン伸ばしていってほしいですね。

「繰り返し」におすすめの本

「わたしのワンピース」
にしまきかやこ・作
こぐま社 1,100円(税別)

うさぎさんが自分で縫った白いワンピースを着て、お花畑に出かけると…ワンピースはお花模様に!「ミシン カタカタ」「ラララン ロロロン」という小気味よいリズムの歌も楽しい。1969年初版のロングセラー絵本。

「まゆとおに」
富安陽子・作 降矢なな・絵
福音館書店 900円(税別)

やまんばの娘まゆに出会った鬼は、まゆを煮て食べようとします。しかし、予想外のまゆの行動に翻弄された挙げ句…。天真爛漫なまゆと鬼とのやりとりは、大人にも楽しめる。ほかに『まゆとうりんこ』『まゆとりゅう』も。

今回で甲斐先生のお話は終了です。ご愛読ありがとうございました。

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