『食育推進研修会』取材レポート~食の支援が大きな子育て支援につながる~

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2017年8月2日(水)・8月3日(木)。
夏本番を迎えた、東京都千代田区の全日通霞が関ビルで「平成29年度 全国保育士会 食育推進研修会」が行われました!

食育といえば、園内で野菜を育てられる環境を整備する園や、給食の献立を家庭と共有する園が増えてきて保育業界全体で熱が高まっていますよね。
今回は全国各地から園長、主任、一般保育士・保育教諭、調理員(師)、栄養士などが集まった食育研修会「2日目」の模様をお届けします。

食育推進研修会ってどんな内容の研修?

「全国保育士会」が実施主体となって開催し、食育に関する知識を深め、各保育所・認定こども園等の職員が情報交換を行い、さらなる保育の質向上につなげることを目的とした研修会です。

1956年に結成した全国保育士会は、現在18万人以上の会員が所属する日本最大の保育士(者)組織です。
「子どもの育ちを支え、保護者の子育てを支え、子どもと子育てにやさしい社会をつくる」ことを目的に、研修会の実施、子どもの豊かな育ちのための制度や施策の充実に向けた提言等の活動を行っています。

当日は午前中が食育に関する講義、午後が参加者同士のグループに分かれて行うワークという2部構成で進行しました。
日本最大規模の食育の研修会なだけあり、北は北海道、南は沖縄まで総勢約160名が参加しました!
みなさん1日目にも参加されているのでお疲れのはずですが、そんなことを全く感じさせない笑顔と活発さが印象的でした。

それでは、さっそく研修会の中身を覗いてみましょう!

食育が目指すもの

2日目のプログラムの最初は相模女子大学 栄養科学部の堤ちはる先生の講義からスタート!!
子どもの発達において、乳幼児の食生活がもつ役割の大きさや、どのような活動が「食育」になるのかなどのお話を聞くことができました。

乳幼児の食育で目指すもの

乳幼児の食生活は、その後の発達につながる大切なものです。
具体的には

■心と体の健全な発育・発達
■味覚、食嗜好・将来の食習慣の基礎形成
■将来の生活習慣病発症

などへの影響が考えられます。

また、

「園では子どもの咀嚼機能に配慮した食事を提供されていると思いますが、その配慮をどれだけ保護者の方に伝えられていますか?」

と、家庭での食生活も保育士・保育教諭、調理員(師)、栄養士等が確認し、丁寧にアドバイスをすることの重要さも訴えていました。

「保護者は毎日、大変忙しいです。食事の重要性を理解していても、今日ぐらいはいいや、と適切とは言い難い食生活を繰り返して、日々過ごしてしまうことも多いと推察されます。一方、子どもの「食」の悩みを抱えている保護者も多数います。このような状況を考えると、現在、様々な場面で“子育て支援“と言われていますが、手っ取り早く、効果的な子育て支援のひとつが食の支援なのではないかと考えています。」

と、保育士・保育教諭、調理員(師)、栄養士等の職員全員が主体となって食育に取り組んでほしいというメッセージを伝えました。

調理や栽培活動をすることが食育なのか?

最近は調理、栽培活動、栄養指導などの取り組みが強調される傾向にありますが、果たしてこれらのイベント(限定)的な取り組みを行うことだけが、「食育」でしょうか?
厚生労働省の「保育所における食育に関する指針」では、食育を通して期待する子ども像が定められています。

 

※堤ちはる氏の資料より転載

堤先生は

「食育の目的のひとつは、『期待する子ども像』にあるような、食に興味を持つ子どもを育てること
イベント的な取り組みはそのための手段の一つであり、最終目的ではありません。これからは一層、生活全体を通して保育所等と保護者の連携を深めることが必要です」

と参加者に伝えました。
また、家庭内でのコミュニケーションも食育のとても大事な要素であり、堤先生は「7つのこ食」についても触れました。

7つのこ食

1.孤食…一人で食べる
2.個食複数で食卓を囲んでいても、食べている物がそれぞれ違う
3.子食子どもだけで食べる
4.小食ダイエットのために必要以上に食事量を制限すること
5.固食同じ物ばかり食べる
6.濃食濃い味付けの物ばかり食べる
7.粉食パン、麺類など粉から作られた物ばかり食べる

そして堤先生は、

「食事は栄養補給の場という役割だけでなく、家族や友人とのコミュニケーションの場、マナーを身につける場でもあります。」

と話していました。
こういった『こ食』にならないように、保育所等としてもできるだけの配慮をしていく必要がありますね。

施設が一体となって取り組んでいる食育事例

続いて、実際に全国の保育所等で「施設が一体となって」取り組んでいる食育の実践事例について各園の代表者からプレゼンテーションがありました。

こども朝ごはんチャレンジ

山口県周南市立第二保育園からは、栄養士の武居美津枝さんから2つの食育事例について報告がありました。
一つ目の発表である「こども朝ごはんチャレンジ」は、子どもたちが望ましい食習慣や食行動を身につけることを目的として、家庭で1週間行われた取り組みです。

この取り組みは各家庭に、赤色の「たんぱく質」黄色の「糖質と脂質」緑色の「無機質とビタミン」が一目でわかる、三色食品群チェックポスターを配布することから始まります。
子どもたちはポスターを見ながら「栄養バランスのよい朝ごはんを食べられているか」を目で見てチェックできるようになります。
そして、自分で「ばんざい」「あといっぽ」のシールを貼ることで、楽しみながら栄養への意識を高めていけるようになっています。

公開保育「お弁当作り」

さらに、ここで学んだ栄養の知識を発展させるために、2つめの取り組みとして公開保育で「お弁当作り」を行いました。
内容としては、まず子どもたちにお弁当に入れたい食材を聞きながら、食材のカードを作ります。
子どもたちはそのカードを使って、自分だけのお弁当作りを体験していくのですが、そうするとどうしても栄養は偏りがちに…。
別途、栄養バランスの基本である黄:緑:赤が3:2:1になるか確認できるカードを用意し、子どもたちはそれを使いながら、バランスのよい食事について学ぶことができました。

また、これらの取り組みの総まとめとして、後日実際に食材を用意して本物のお弁当づくりを子どもたちに体験してもらいました。
実際の食材を見ることで、子どもたちは今まで学んだ知識と生活が結びつき、バランスのよい食事への関心が深まったようです。

堤先生はこの2つの取り組みに対し

「可視化することで、子どもたちも楽しみながら、食への興味・関心を高めることができますね。」

とコメントされていました。

データを駆使した離乳食への取り組み

続いて、山形県西置賜郡白鷹町の愛真こども園主任栄養士 松永明子さんから報告がありました。
乳児の離乳食は段階が進むにつれて食事の回数や量、種類が増えるため、切り替えていくタイミングを図るのが難しいといわれています。
そこで、愛真こども園で行っている、入所時期から職員と保護者が連携を取りながら、一人ひとりの発達に合わせた離乳食と授乳量を決めるという取り組みをご紹介します。

 

ある日、保育教諭がある園児の連絡ノートを読んでいると、「この子は家庭での離乳食が進んでいないのでは?」という疑問を抱きました。
そこで保育教諭、栄養士、保護者で面談を行い、「保護者の方にはあまり料理の経験がなく、どのように離乳食を食べさせたら良いかわからなく悩んでいるんだ」ということに気がつきます。
そこで、簡単にできる離乳食の作り方を伝え、

「ベビーフードは、柔らかめで、濃い目の味付けの傾向がある。使うなら、野菜一種類でもいいので歯茎でつぶせる固さにゆでて混ぜてください。」

などの、保護者が無理なくできることからアドバイスを行いました。
この園では、栄養士が身長体重の成長曲線と、離乳食と授乳量の相関関係を分析していたので、データをもとに的確な支援ができました。

他にも、保護者の方との懇談会を定期的に開催してゆっくり話せる場を設けることで、今後の離乳食の形態、大きさ、固さと食材の確認、授乳量を確認するといった取り組みも行っています。
「ネットで調べても、実際に子どもを前にすると何をどのような固さで食べさせたらいいかわからない」といった保護者の方もいらっしゃるので、対面で、現物を見せながらの話し合いは大事なんですね。

堤先生も、

「日誌だけでなく、グラフで変化を見られる取り組みは保護者と職員、また、職員間での共通理解に大変効果的です。」

とコメントをしていました。

グループワーク「施設が一体となって食育に取り組むために」

午前中にとても濃い講演を聞いた後は、お昼休みを挟んでグループワークの始まりです!
今回のテーマは、午前中の講演にもあった「施設が一体となって食育に取り組むために」

1グループ6人程度に分かれて、お互い初対面のなか始まりましたが、会場は明るい空気が流れます。
毎日子どもや保護者とコミュニケーションを取るのがお仕事なだけあり、初対面のグループワークでも、どのテーブルも活発な議論を交わしていた姿が印象的でした。

90分ほどの討議時間が終わると、いよいよ発表の時間です!
いくつかのグループが、参加者それぞれが働いている園でどんな取り組みをしているかをまとめて発表しました。

「保育士・保育教諭、調理員(師)、栄養士がそろう会議を定期的に開き、意見を交換する場を設けています。」

「保育所等に通っていない家庭にもお休みの日などに園を開放することで、子どもが遊具で遊べる場や、保育所等の食事を試食できる機会を作っています。」

「調理員(師)、栄養士も園児や保護者と積極的にコミュニケーションをすることを心がけています。距離が縮まることで、給食の改善や、各家庭の状況に合わせた食事のアドバイスにもつながります。」

など、特色のある取り組みがいくつも発表され、改めて参加者のみなさんの食育に対する意識の高さや、「今回の研修で得たものを職場に持ち帰って、また新しい食育に挑戦しよう!」という熱い気持ちが感じられたグループワークでした。

また、堤先生はこれからの食育について、

まずは、子どもの身近にいる職員や保護者が食への興味・関心を持ち表現することが大切です。『今日のお昼は「五目中華炒め」です。赤いのは何だろう?パプリカかな?』など話しかけることが、子どもの食に対する興味を引き出すきっかけになり、それが食育の原点でもあります。」

と締めくくりました。

閉会の挨拶ー全国保育士会副会長 村松幹子さん

グループワークも終わり、2日間の研修会もいよいよフィナーレです。
実施主体である全国保育士会の副会長 村松幹子さんから閉会の挨拶がありました。

 

「今回の研修で得られた知識や、他園の取り組みなどはみなさんの大きな宝物になることでしょう。食育の重要性については、この2日間でみなさん感じられたことだと思います。それぞれの園に事情を抱えながらも、自分たちの園が置かれた環境をうまく活かして、新しい食育の展開に挑戦していってほしいと思います。」

まとめ

今回この研修会の模様を取材させていただいて、「食育」とひと言でいっても、保育所等が関われる範囲はとても広いということを感じました。

給食を意識するには、家庭での食事も捉える必要があり、家庭での食事を捉えるには子どもの生活全体を捉える必要があります。
そして、子どもの生活全体を捉えることで保育がもっと良くなっていく。
堤先生が「食育は保育の一部である」とおっしゃっていたように、食育と保育は切っても切れない関係なんですね。
保育士・保育教諭、調理員(師)、栄養士、保護者など…子どもに関わる全ての方が手をつなぎ、連携することで、子どもがもっと健やかに育っていける未来がすぐそこに見えたような気がします。

最後になりますが、温かく取材にご協力くださった全国保育士会事務局様、参加者のみなさま、ありがとうございました。

取材協力 全国保育士会

日本最大の保育士(者)組織。「子どもの育ちを支え、保護者の子育てを支え、子どもと子育てにやさしい社会をつくる」ことを目的に、研修会の実施、子どもの豊かな育ちのための制度や施策の充実に向けた提言等の活動を行っている。
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