「第61回 全国保育研究大会」取材レポート~すべての人が子どもと子育てに関わりをもつ社会の実現を目指して~

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2017年11月15日,16日,17日の3日間、兵庫県神戸市で全国の保育関係者が一堂に会する「全国保育研究大会」が開催されました!
 
大会のテーマは「すべての人が子どもと子育てに関わりをもつ社会の実現をめざして」
日本各地の先駆的な保育・子育ての取り組みを学びあう場となっています。
 
会場はポートアイランド内にある神戸ポートピアホテルです。
全国から参加者が集まることもあり、とても広く綺麗な会場でした。
 

 
当日はクリスマスを1ヵ月後に控えていたので、ホテルにはこんな素敵なツリーも飾られていました☆
 

 
この記事では、「分科会」と呼ばれる各地域から選ばれた保育施設による発表が行われた2日目の模様を、たっぷりお伝えしていきます。
保育や子育てでお悩みのみなさんへ、少しでもこのレポートが参考になりますと幸いです。
 

配慮を必要とする子どもや家庭への支援

保育所・認定こども園などにおいて、発達障害をはじめとする「配慮を必要とする子ども」への対応が課題に挙げられることがあります。
 
最近は障害のある子どもも一緒に保育をおこなう、インクルーシブ保育という言葉を聞くことも増えてきました。
 
ここでは「茅ヶ崎市立 浜見平保育園」での取り組み事例についてご紹介します。
 

 
A君の場合>
 
インターホンを何度も押す、友達との距離感が分からず突然抱きつく、など衝動的な行動が多かったA君。
保護者の方はどう対処すればよいか分からず、A君の行動に振り回されながら困っていました。
 
-子どもへの対応
 
まず、「必要以上にA君の行動に対して注目し過ぎない、声を掛けすぎない」といったことを保護者と協力しながらおこなったそうです。するとA君は少しずつ目立つことへの興味が少なくなり、良いこと・悪いことを理解しながら落ち着きを取り戻していきました。
 
次に、お友達との距離感を伝える絵を描いたカードを作ってA君に見せていきました。
○と×のしるしを絵の横に書き、見ることで適正な関わり方を学んでいくうちに、他人との上手な距離感を持てるようになったそうです。
 
―家庭への支援
 
園に保護者の方から、「A君の発達検査を受けたい」との要望がありました。浜見平保育園はすぐにいくつかの機関をリストアップして保護者に紹介しました。後日、保護者がA君を連れていき診断を受けたところ、小集団療育を勧められたそうです。
専門機関でアドバイスを受けたり、保育園での定期個別面談を実施したりしていくうちに、保護者の表情に明るさが戻ってきたそうです。
 
以上、浜見平保育園の取り組みについてお伝えしました。
保護者への対応も、複雑な家庭事情が絡むとより難しくなる場合もあります。
担当が一人で問題を抱え込まず、園全体で話し合い、関連機関との連携を密にして、その子どもや家庭にあった支援をおこなうことが大切なんですね。
 

保育の営みを社会にどう発信していくか

地域や保護者の方々との協力なしには実現しない保育園・幼稚園。
多くの方に保育の内容や子育ての楽しさを理解してもらうため、どの園も試行錯誤しながら様々な発信活動をおこなっていると思います。
今大会のテーマでもある「すべての人が子どもと子育てに関わりをもつ社会の実現」にも関わる保育の社会化について、「社会福祉法人吉敷愛児園 愛児園湯田保育所」の取り組みをご紹介します
 
―夏まつりを通した地域への発信
 
保育園でおこなわれる行事は、園児とその保護者だけでなく近隣の学生や高齢者施設の方なども集まる大事な地域交流の場にもなっています。
そのため湯田保育所では、子どもと一緒に案内状を配ったり、ポスターを地域に掲示して気軽に来園してもらえるような発信をしています。
また、夏まつりでは小動物供養や子ども太鼓などのほかに、献灯式も行っています。保護者の方が、「こんな子どもに育って欲しい」などの願いごとを書いた灯篭を飾り、火をともします。その後は湯田保育所の原点となっているお寺に奉納されることになります。
地域全体へ向けて、保護者の想いが発信される場として毎年たくさんの方が参加しているそうです。
 
-1日保育士・半日保育士体験
 
湯田保育所では30年ほど前から、保護者に保育士の仕事を体験してもらう取り組みを続けてきています。おこなう目的は主に4つです。
 
■保護者に子どもの姿を知って欲しい
―保育士や同年齢の子どもとどう関わって、保育園の毎日をどう過ごしているか見て欲しい。
―わが子がどんな環境で育っているのか見て、安心して欲しい。
 
■保育士の資質の向上
―保護者の不安や思いが分かる良い機会とし、保育者は保育の振り返りをしながら、子どもを理解していく。
 
■園と保護者の信頼関係を深めていく
―何気ない会話を楽しむ中で、保護者の不安や思いを受け止め、コミュニケーションを取る
 
■保育の理解
―保育者の支援や配慮(子どもたちへの関わり方、言葉がけ、褒め方、気持ちの受け止め方など)を見たり、聞いたりして、子どもの気持ちに寄り添うことが大切と気づいてほしい。
 
この取り組みは「子どもの世界を見てみませんか?」という見出しで、保護者の方へおたよりで発信しています。保護者が希望日と時間を記入して申し込みできる形にしています。
日頃の保育や子どものありのままの姿を知ってほしいという保育士の思いはありますが、お子さんの誕生日や園外保育、行事がある日を希望する方が多いそうです。
体験の内容としては、「子どもと一緒に遊ぶ」「絵本の読みきかせ」「午睡時の手伝い」や、「小さいクラスでは着替えの援助」等、保育士と同じ仕事が体験できるようにしています。

保育士と保護者の信頼関係を強くするキッカケとしても大きな意味を持つこの取り組み。
実際に園でお友だちとのトラブルが多かったAくんのお母さんが参加された際、走り回るAくんの姿を見て、午睡中の少しほっとした時間に「家庭でも、いつも落ち着きがないんです。ご迷惑をおかけします。」と言葉を漏らしたそうです。
それまで育児の悩みをなかなか打ち明けてもらえませんでしたが、この取り組みを機に保育士と保護者の二人三脚でA君の成長について考えられるようになったそうです。
 
体験後にはアンケートの記入をお願いし、保護者の方がどう感じ、見ているかを保育士が知り、その後の保護者支援につなげていけるようにしています。
 

ガゼルの森~インクルージョン保育の軌跡

また、全国保育研究大会では、各地域から選出された発表のほか、保育・子育て支援関係者が自由なテーマで研究発表し、協議・交流を深める場として「フリー発表分科会」を設けています。そのなかから、インクルージョン保育の実践事例を発表したガゼルの森をご紹介します。
 

 
ガゼルの森は、障害のある子どももない子どもも、一人ひとりのニーズに対して必要な支援をおこなうことで、みんな一緒に過ごせる社会を目指す、静岡県の社会福祉法人です。
ガゼルの森は児童発達支援センターと保育所の複合施設で、それぞれの施設で過ごす子どもが行き来できる造りになっていたり、作業療法士・理学療法士などの「リハビリテーション専門職」が在籍していたり、子どもたちのケア体制は整っています。

大きく2つ、支援部と呼ばれる発達支援や障害児相談支援をおこなっている部門と、保育所や一時預かりをおこなっている保育部という部門に分かれてはいますが、今は横断的に子どもたちの交流が毎日できる仕組みづくりや環境づくりができています。
子どものみならず、職員にとっても手探り状態の中始まったインクルージョン保育が、どのように発展してきたのでしょうか。
 
―話し合いの時間が持てない!
 
支援部では固定勤務、保育部ではシフト勤務で職員が働いています。
どうやって子どもたちの交流を深めていくか、両方の部で話し合いを重ねていこうと思っても、なかなか全員揃った会議は行えません。
よい方法を求めて、支援部の療養時間の前後、保育部の午睡中など時間を見つけては少しずつ話し合いを進めていくしかありませんでした。
 
―1年目・2年目の試行錯誤
 
インクルージョン保育をおこなうにあたり、まずは自由遊びでの交流から始めました。
年代ごとにねらいを定めましたが、共通のねらいは「お互いを認め合う」こと。コーナー遊びを一緒に行ったとき、最初は黙っておもちゃをとってしまう子どももいましたが、だんだんお互いを認めて一緒に遊べるようになり、成長を実感できるようになったそうです。
 
また、夏祭りでは保育部の子どもがダンス、支援部の子どもが竹だいこでコラボレーションするようになりました。支援部からも一部の子どもは保育部の子どもと一緒にダンスに参加できるようになり、ともに時間を過ごし、何かを成し遂げる経験は、お互いのクラスの子どもにとってよい刺激になったそうです。
 
―5年目の取り組み~毎日交流
 
支援部には、基本的生活習慣が自立しているものの、ちょっとした落ち着きのなさ、自信のなさが見られる子どもたちが過ごす「こあら組」というクラスがあります。
ガゼルの森では、この「こあら組」を対象に年中児は週2日、年長児は毎日(給食まで)保育部のクラスで一緒に過ごす取り組みをおこなってきました。
月に一度、両方の職員で情報共有のための話し合いをおこない、子どもたちも過ごす時間が長くなってくるにつれて「一緒にいるのが当たり前」といった空気が生まれるほど馴染むようになったそうです。

初めはクラス毎にかたまって過ごしていた子どもも、徐々に「僕もいれて」「一緒にやろう」と声を掛け合えるようになり、交流クラスとしての一体感が確立されました。
 
―新たな一歩を~まとめと課題
 
子どもたちはお互いを受け入れ、協力して過ごせるほど認め合える関係になってきました。しかし、毎日交流ができるのは一部のクラスに限られてしまっていて、職員同士の「所属」に関する意識はまだ残っているのが現状です。
子どもも、職員も、「みんないっしょ」に生活できるようになるため、今以上に一緒に過ごせる時間を増やしていきたいと考えているそうです。
 

まとめ

以上、全国保育研究大会の模様をお伝えしてきました。
たくさんの取り組み事例の共有から学ぶことも多く、参加されていたみなさんも熱心にメモを取っていた姿が印象的です。

また、各講演の後には質疑応答の時間も設けられており、発表を聞いて気になったことや、ご自身の園での悩みなどを話し合う姿も見られました。
 

 

 
今回の研究大会のような場をきっかけに、保育や子育てに関わる方が連携して、子どもを取り巻く業界全体の活性化が進んでいくことを願っています。

取材協力 全国保育協議会

公・私立を問わず、全国21,000か所を超える認可保育所・認定こども園等が加入する保育団体。主な活動としては、会報誌やホームページ等による情報提供や広報活動、研修会の企画・開催による保育関係者の研修活動、保育に関わる調査・研究事業、また保育制度や施策について保育関係者の意見をまとめ、国(行政)等へ提言するなどの活動を行っている。
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