子どもの味覚の育て方③ 乳幼児期の食事のポイントと、素材・風味別調理のコツ

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人の味覚や、食べることが楽しいと思えるかどうかは、離乳期や幼児期に何をどんなふうに食べてきたかで大きく変わります。
子どもたちの味覚の感受性を高め、食事がおいしく楽しいものであると感じさせてあげるためには、園での食生活も大切なポイントになるでしょう。
人気フードアナリストのとけいじ千絵先生に、給食作りや食べさせ方、食育などについてアドバイスを伺いました。

取材・文/野中真規子

PROFILE:
とけいじ千絵(とけいじ・ちえ)先生

「審食美眼(食に対する審美眼)を磨き、彩りある食生活を」をモットーに、『審食美眼塾』を主宰するフードアナリスト。企業の商品開発、飲食店のコンサル業務を経て、「味覚」に特化した食育に取り組む。現在は講師、フードライターとして日本経済新聞、日経DUAL等各種メディアで活躍中。とくに、離乳期から味覚を育てることを目的とした講座は、募集開始から数分で毎回満席になるほど、予約のとれない講座として大盛況を呈している。全国フランチの会副会長、ジャパンフードセレクション審査員。
著書に「0~5歳 子どもの味覚の育て方」(日東書院・1,300円+税)がある。

2歳前後の好き嫌いは、味覚の幅を広げるための成長段階

子どもは生まれたときから味覚があり、妊娠5ヶ月から生後3ヶ月はもっとも味覚が発達し、とても敏感になっています。その後徐々に落ち着いていき、幅広い味が受け入れられるようになるのが生後6ヶ月頃。ちょうど離乳食スタートの時期にあたります。

まだ好き嫌いが出てくる前のこの時期に、できるだけ幅広い味を経験させてあげることが、子どもの味覚を育てるためには大切です。素材そのものの味を楽しめるように、薄味で、食べやすい形状にしてあげましょう。

3回食が順調に進み、1歳半くらいに第一乳臼歯が生えてきたら、幼児食に切り替え、2歳くらいになったら、大人の味付けに少しずつ近づけていけるよう、レシピを工夫しましょう。

なお、この時期は「拒絶期」といって、多くの子どもが五味を判別できるようになるとともに、味の序列をつけるようになるため、好き嫌いが出やすくなります。
昨日まで食べられたものが急に食べられなくなったり、逆に嫌いだったものが好きになったりと、ころころ変わるのですが、こうした過程をたどってこそ、味覚の幅が広がっていくことがわかっています。食べさせる保育士さんにとっては大変なこともありますが、成長段階のひとつだと認めてあげましょう。

嫌いな食べ物のイメージは、味付けや雰囲気の工夫で塗り替えられる

子どもの脳が、ある食べ物について「嫌い」と感じる理由は、それを食べたときにまずいと思ったり、食べているときに叱られるなど不快な経験をすることで「嫌い」という脳の回路が活性化するからです。

しかし、たとえば味付けを変えたり、楽しい雰囲気で食べるように工夫することで、「嫌い」という回路を塗り替え「普通」や「好き」に変えることができます。

そのためには「苦手なものでも必ず一口だけは食べてみる」「おかわりは全種類に口をつけてから、ひとつだけではなく全種類を盛る」といったルールを徹底させましょう。
「苦手だから」と出すのをやめるのではなく、子どもが、ふと「食べてみようかな」と思ったときに、食べられるよう、気長に待つことも大切です。

やがて8〜9歳で好き嫌いは固定してきますが、それまでの間にできるだけ苦手なものを克服させてあげられるといいですね。ただ、中には好ききらいが多くて克服できない子や、食べることに興味がない子もいます。

苦手な味をやわらげて、楽しく食べさせてあげよう

天然だしの旨みを知ることは、味覚のベースとなります。早いうちから給食にもだしをたくさん使って、おいしさを刷り込んであげましょう。基本的にはかつお&昆布のだしをおすすめします。煮干しだしやあごだしなどは、毎回は与えないようにしましょう。うまみが強すぎるため、こればかりを与えると、かつおのうまみが感じられなくなることもあるからです。
だし本来のうま味を感じさせるために、調理の際は、油脂や砂糖、みりんなどの甘みはなるべく控えるようにしてください。塩やしょうゆは多少たしてもいいでしょう。

酸味については苦手な子どもは多いので、うんとハードルを下げてあげる必要があります。甘み、油脂分、だしなどを加えましょう。とくにだしを足すとまろやかになるのでおすすめです。

果実の酸味、ヨーグルトの酸味、酢の酸味など、いろんな酸味がありますが、比較的子どもが食べやすい果実の酸味から慣らすといいでしょう。さつまいものレモン煮などもいいですね。お酢の酸味は、加熱してアルコールを飛ばしてあげると食べやすくなります。油脂分を足すなら、甘辛く炒めたり、揚げたりしても。甘酢の味は好きな子どもが多いので、甘酢をつくり、野菜スティックなど手づかみできるものを漬けて食べさせてみてください。

食感については、離乳期は固いものをかむのがまだ難しいので、きゅうり、いんげんなど、手づかみできる野菜などを使って、かじり食べの練習を。まずは大人が持って、前歯でかみ切らせてあげるところからスタートします。
口に入れたら「どんな音がする?」などと声掛けしてあげると、丸呑みせず、かんで食べるようになります。2歳頃になったら、きくらげなど歯ごたえのあるものを、きざんであげるのもいいでしょう。

素材別に、もっとおいしく食べさせるための調理法とは?

干ししいたけ、切り干し大根などの乾物は、食感が苦手な子どもも多いものです、細かくきざんだり、ミキサーにかけたりして、卵料理など洋風な料理に混ぜ込むことで、食べやすくなります。

肉の繊維質はかみ切りにくいので、とろみづけを。とろみづけといえば片栗粉が代表的ですが、小さい子どもは大人よりずっと味覚が敏感なので、片栗粉ばかりだといつも同じ味だと感じてしまうことに。ほかの、すりおろした高野豆腐やにんじん、ふやかしたオートミールなどの食材でとろみづけをすれば、味を変えられ、栄養価も高めることができます。

野菜の7〜8割は苦味があり、とくに緑色のものだと、はじめは食べたがらない子どもも少なくありません。これは「新奇恐怖」といって、雑食性動物がみせる生存本能の警戒行動。簡単にいうと、初めて食べるものに対する警戒心です。

とくに赤やオレンジ色など暖色系の野菜と違い、ほうれんそうなどの寒色系の野菜は、見た目にも熟していないと本能的に感じられるので、新奇恐怖が出やすいのです。口に入れると眉間にしわを寄せて食べたり、吐き出したりする子どももいますが、はじめのうちは口から出してもいいので、繰り返し出すこと。2〜3回あげるうちに、ふと食べるようになることも多いものです。また緑の野菜は、油で炒めると、油脂分で苦味が緩和され、より食べやすくなります。

次回は「保育士さんのお悩み別・食べさせ方のポイント」をご紹介します。

著書紹介

「0~5歳 子どもの味覚の育て方」
(日東書院・1,300円+税)
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