【インタビュー前編】怒りを理解し、上手に付き合っていくには?/日本アンガーマネジメント協会・戸田久実さん

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保育園や幼稚園で働く先生にとって、時々湧き上がる「怒り」の感情ほど怖いものはないのではないでしょうか。

「私、なんであの時怒っちゃったんだろう」
「子どもを怯えさせたいわけじゃないのに…」

怒りは、自分の心に大きな後悔を残していきますよね。

誰しもが抱いてしまう「怒り」ですが、もしも自分の怒りを上手にコントロールできるようになり、怒るべきことと怒らなくていいことが区別できるようになったらどうでしょう。
感情の爆発で誰かを傷つけてしまうことはなくなり、子どもへ伝えたいこともまっすぐ伝わるようになるとは思いませんか?

実はこういった「怒り」と上手に付き合っていくための心理トレーニングとして、世界の公的機関や企業、教育現場、医療現場などでも導入されている「アンガーマネジメント」という方法があります。
日本でも、官公庁や大手企業をはじめとした多くの組織が導入を進めており、テレビや新聞・雑誌などのメディアでも広く取り上げられるようになりました。

今回、そのアンガーマネジメントの日本での普及を推し進めている『一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会』の理事・戸田 久実さんに、保育現場で働く先生が、怒りと上手に向き合うための方法について教えていただきました。

戸田 久実

戸田久実理事2017 (1)
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事
アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役
大学卒業後、民間企業にて営業・社長秘書として勤務。現在は民間企業、官公庁の研修・講演にて、「アンガーマネジメント」「クレーム対応」「女性リーダー育成」など多岐にわたる研修や講演を実施。講師歴は25年。登壇数は3000を超え、指導人数は10万人に及ぶ。
公式ホームページ

 

アメリカ生まれの心理トレーニング「アンガーマネジメント」

まずはアンガーマネジメントについて教えてください。

-アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで開発された、怒りの感情と上手につき合うための心理トレーニングです。
最初はDVや差別、軽犯罪者に対する矯正プログラムとして使われていました。
だんだんと社会での必要性が高まっていき、2001年ごろからプログラムの普及が急激に加速しました。
米国郵政公社をはじめとする公的機関や、世界中の政治家や、スポーツ選手、俳優など、職業にとらわれず多くの方がよりよい生活や人間関係を手に入れるためにアンガーマネジメントを取り入れています。

世界中でプロフェッショナルの方々も取り入れているトレーニングなのですね。

怒りはなぜ生まれるのか

そもそも、なぜ私たちには怒りの感情が生まれるのでしょうか?

-怒りは、自分の中にある「○歳児の子どもはこうあるべき(あってほしい)」「保護者の方はこうあるべき(あってほしい)」という、「~べき」という言葉に象徴される、理想や願望、ゆずれない価値観等が裏切られた、また、その通りにならないときに生まれます。
たとえば、「もう年長さんなのだからお話するときは静かにするべき」「保護者なのだから子どもが忘れ物をしていないか確認するべき」などです。
保育士さんの場合は「私は保育士だから子どもを良い子にしないといけない」という責任感も含まれていて、なかなか保育が思い通りにいかないときに怒りが生まれやすいのかもしれませんね。

怒ったっていい。怒りは「嬉しい」「悲しい」と同じ、誰もが抱く感情

では、アンガーマネジメントというのはなるべく怒らないようにする方法なのでしょうか?

-いいえ、アンガーマネジメントでは明確に怒ることは悪いことじゃないと伝えています。
誰しもが「嬉しい」や「悲しい」といった感情を抱くと思いますが、「怒り」もまた誰もが抱く自然な感情です。ただ「怒り」はとても大きなエネルギーを持っていて、扱い方を間違えると他人を傷つけ、自分までもが傷ついてしまうこともあります。
大切なのは表現の仕方や、「無駄な怒り」に振り回されないことです。 アンガーマネジメントの目的もここにあります。

なるほど、だからアンガーマネジメントを通して怒りを自分でコントロールできるようになることが大切なんですね。

今日からできるアンガーマネジメント-「対処術」と「体質改善」

日々のお仕事のなかでカーッと頭に血がのぼってしまったとき、怒りをコントロールできるようになるテクニックなどはあるのでしょうか?

-アンガーマネジメントでは大きく分けて二つの方法をお伝えしています。それは、怒りに任せた行動をしないための「対処術」と、長期的に怒りにくくなるためのに長期的に取り組むトレーニングとしてである「体質改善」です。

対処術

-まず、対処術についてご説明します。
いくつかある対処術の目的は、一般的に怒りのピークといわれている最初の「6秒」をいかにやり過ごすか、です。
この「6秒」は、まさにおっしゃっていた通り、頭にカーッと血がのぼり熱くなってしまう時間だといわれています。怒りに身を任せて後悔してしまわないように、対処術を参考にして6秒間をやり過ごすことがアンガーマネジメントの第一歩になります。

■対処術1.カウントバック

-怒りそうになったときはまず、100,97,94…と、6秒間を頭の中で逆算して数えてみましょう。
怒りのピークである6秒が過ぎれば、のちほどお話しますが、目の前のことが「自分の怒るべきことかどうか」を見極める余裕が生まれます。
この時、数えることに意識を向ける為に少し考えないと数えられないよう、逆算することがポイントです。

■対処術2.呼吸リラクゼーション

-ひと言でいうと、深呼吸のことです。
怒ると手が震えてきてしまったり、呼吸が浅くなってしまう…といった経験はありませんか?怒ると自律神経が乱れるといわれているので、ゆっくり腹式呼吸をして整えましょう。
鼻から息を吸い、口から静かに息を吐きます。4秒ほどで吸い、8秒ほどで吐き出すようなイメージです。時間はおおよそでかまいません。

体質改善

-体質改善とは、怒りにくくなるための長期的に取り組むトレーニングです。

■体質改善1.アンガーログ

-怒りを感じた出来事を、日付・場所・出来事・思ったこと・怒りの強さ(1〜10)に分けてノートなどに書いてみてください。
冷静に自分がどんなことに怒りを感じやすいのかが分かり、「こんなことで怒らなくてもよかったな」と振り返ることもできます。

■体質改善2.ストレスログ

-自分が怒りを感じている状況を、「自分の力で変えられるもの」「自分の力ではどうしようもないもの」という2軸と、「重要なもの」「重要ではないもの」の2軸で4つに分けていく方法です。

アンガーマネジメント協会記事画像

「〜あるべき」と思っていても、自分の思い通りにならないことはたくさんあります。それらに対して、「なんとかならないかな」と思い続けるとさらに大きな怒り、ストレスになります。アンガーマネジメントでは、怒りを感じている状況が、自分の力で「変えられるのか・変えられないのか」を見極めることで無駄な怒りを減らしていくことも大切です。ストレスログを活用すると、「どう行動したらいいかがわかるようになります。
書く時間が取れないという方は、夜寝る前などに「あの時って私が怒ってなんとかなる状況だったのかな」と思い返してみるだけでも効果がありますよ。

今すぐに行動できそうなものばかりですね。思い返してみると、自分が怒ったところで状況が解決しないこともたくさんあったような気がします。まずは怒る前に6秒数えてみることからやってみたいと思います。

-私自身もひとりの母親として、子育てを通して子どもと接してきました。初めての子育てでは戸惑うことやイライラしてしまうことも多く、アンガーマネジメントと出逢ったときには「もっと早く出逢っていたかった!」と強く感じたことを覚えています。胸を張って「いいお母さんだった」とは言えない私だからこそ、一人でも多くの方が子どもと笑顔で接していける助けになれればと思います。

「つい怒ってしまう」がなくなる 子育てのアンガーマネジメント81EGatMwx3L
著者・戸田久実
定価 1400円+税
青春出版社

第一回目の記事は以上です。戸田さん、ありがとうございました。
次回は「怒りの裏側にある感情とは?」をテーマにお届けします。

協力:一般社団法人日本アンガーマネジメント協会

日本アンガーマネジメント協会は、ニューヨークにアメリカに本部を置く「ナショナルアンガーマネジメント協会」の日本支部。アンガーマネジメントの普及を担うファシリテーターやキッズインストラクターは、全国に7,000名以上の登録がある。”怒り”の感情コントロールでパフォーマンスの向上を目指すべく、全国でセミナーや講座を開催したり、企業の研修活動に関わったりしている。
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