自分でできる子に育てるモンテッソーリ流子育て③ ――保育士のためのモンテッソーリ教育の取り入れ方

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子どもをやる気にさせる環境を用意し、グングン伸びる子を育てるモンテッソーリ教育。最近は、モンテッソーリ教育のメソッドを取り入れた保育園も増えています。普通の保育園との違いはどこにあるのでしょうか? 第3回目となる今回は、モンテッソーリ教育の保育園「フロンティアキッズ」に勤務経験のある神成美輝さんに、保育現場で実践していたことを教えてもらいました。

取材・文/白石りさ

Prifile:神成美輝先生

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保育士、幼稚園教諭2種。幼稚園に4年間、病児保育室に2年間勤務した後、モンテッソーリ教育で有名な「早稲田フロンティアキッズ」に7年間勤務。2009年12月に「フロンティアキッズ河田町」開設に伴い、園長に就任。2012年、モンテッソーリ教師の資格を取得し「メデュケア モンテッソーリ ナーサリースクール」の指導者として勤務。モンテッソーリの現場に精通し、子どもだけでなく保護者への啓発にも力を入れている。現在、1歳と3歳の子どもがいる。

モンテッソーリ教育の保育園の特徴

私が最初の幼稚園に勤めていた頃は、子どもが言うことを聞かなければ「ダメッ!」と叱ってばかりでした。でも、イヤイヤ期の子どもを「ダメッ」叱ること逆効果だったのです。子どもは自分がやりたいのに、やらせてもらえないと反抗してしまうので。大切なのは子どもの気持ちを受け入れることです。「ダメ」と叱る前に「やりたかったのよね」と理解を示し、「でも、今はできないのよ」と、子どもの気持ちをすくいとることがポイントです。モンテッソーリ教育は大人中心ではなく子供中心の世界に成り立っているところに、大人がサポート役に回ります。

モンテッソーリ教育の保育園では、保育士が「ダメ」と抑制したり、「やりなさい」と指示することがないので、子どもが生き生きと楽しそうに園生活を送っていました。モンテッソーリ教育のメソッドである、子どもを観察し、発見し、見守るという一連の流れがわかってくると、現場がとても楽しくなります。子どもの敏感期を見つけて、その子どもに合わせて教材を用意します。その教材で楽しそうに遊ぶ子どもたちを見ていると「よっしゃ!」と心の中でガッツポーズをしました。

また、モンテッソーリは縦割り教育なので、年長の子が下の子にいろいろと教えているんです。例えば、これはここにかけるんだよ」と、カバンをかける場所を教えたり。だから、一人っ子でも園では兄弟がいるような環境が整っています。靴下をはかせてあげたり、自分が上の子に教えてもらってきたから、下の子が入ってくると、自らやろうとする子どもも多いですね。だから、先生が声をかけなくてもクラスが回っていくんです。私がモンテッソーリ教育の保育園に入った頃は、こんなにも子どもに声かけしなくていいのかと、今までの保育園とのギャップに驚きましたね

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モンテッソーリ教育の保育園で実践していること

モンテッソーリ教育では、子どもの能力を伸ばすために手を動かしたり、道具を使うことを推奨しています。

0歳の赤ちゃんには指先を使う遊びがおすすめ。ボールなどをつまんで落とす遊びが一番人気ですね。1歳くらいの子はスプーンやピッチャー、トングなど3本指を使ってものを移す作業に夢中になります。2歳になるとビーズ穴に糸を通すことができるようになって、3歳になるとドライバーを使うことも覚えます。4~5歳の子には先が尖っていない毛糸針を使って、縫い刺しを教えます。ビーズに糸を通す段階を踏んでいるので、縫い刺しもスムーズに覚えます。6歳になると刺しゅう針を使いこなして、刺しゅうを卒業制作できるほどに手先が器用になります。

また、0歳児クラスでは大きな鏡とバーを設置しています。自分の動きが鏡に映るので、子どもたちは興味津々になります。鏡で自分の姿を確認することは、自我が芽生えるきっかけにもなります。無理に立つ練習をさせなくても、鏡で自分の姿を確認しながら、バーにつかまって、つかまり立ちの練習を始めるようになります。

他にも敏感期の子どものこだわりやすい性質を生かし、名前やマークを貼ってものを置く場所を決めておくと、片付けができる子どもになります。トイレには小さなイスを設置し、トイレトレーニングの子どもが服を脱ぎ着しやすいように工夫しています。

このように、モンテッソーリ教育の保育園では子どもたちが伸びるような環境を整えています。モンテッソーリ教育を受けた子どもたちは、自分でやりたいことが見つけられるようになります。私が十数年前に教えていた子どもは、中学生のときに「高校生になったら留学したい!」と決意し、本当に海外留学をしました。現在は大学生になり、医師を目指してアメリカの大学に通っているそうです。

保育園の現場にモンテッソーリ教育を取り入れるコツ

現在、モンテッソーリ教育の保育園に勤務していなくても、モンテッソーリ教育に興味を持っている保育士さんがいるかもしれません。専門の保育園でなくても保育士が実践できることとしては、子どもに声をかけすぎないことです。私がモンテッソーリの保育園に就職した際は、周りの保育士さんから「子どもに声をかけ過ぎよ」と、よく注意されていました。どんな子どもにも、自分でできる能力が備わっています。まずは子どもを観察し、見守り、適切なタイミングを見計らって声をかけることがポイントです。

子どもの様子をよく観察していると、敏感期特有の行動が見えてくると思います。そして、敏感期に合わせて環境を整えることも大切です。シールやビーズ、縫い刺しできるものなど、その子に合ったものを用意しましょう。今は100円ショップにいろいろ売っているので、堅苦しく考えずにまずは手頃な道具で揃えてみてください。そして、余計な口出し、手出しをせずに、子どもの行動を温かく見守りましょう。子どもの能力を伸ばすために、大人はほんの少し手助けするというスタンスでいることが大切です。

知る、見守る、ときどき助ける
モンテッソーリ流「自分でできる子」の育て方
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著者・神成美輝
定価 1400円+税
日本実業出版社

欧米で実績のあるモンテッソーリ流の子育てメソッドを紹介。イヤイヤ期に突入した子どものこだわりやいたずらに意味があることに気づき、ちょっとしたコツを知ることで、子育ては今よりもっと楽しくなるはず。子どもが環境に対して敏感になる時期を「知る」、子どもをきちんと観察して「見守る」、子どもに適切に声をかけて「ときどき助ける」を実践することで、子どもの自主性、独立心、知的好奇心を育みましょう。

 

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