保育士研修はスキルアップのために不可欠!そのメリットとは?

保育士キャリアアップ研修(以下保育士研修)は、厚生労働省によって実施される保育士の専門性強化と待遇改善を目的とした研修です。平成29年より新設された役職、副主任保育士・専門リーダー・職務分野別リーダーになるためには、この研修を修了する必要があります。

研修分野は専門分野研修(乳児保育、幼児教育、障害児保育、食育・アレルギー対応、保健衛生・安全対策、保護者支援・子育て支援)、マネジメント研修、保育実践研修の全8分野です。
受講対象はおおむねキャリア3年以上の中堅保育士です。研修修了して役職がつくと、給与アップや転職に有利になるといったメリットが得られます。

この記事では、保育士研修を修了することで得られるメリットや役職、研修内容の詳細、受講方法などについて詳しくご紹介いたします。

保育士研修を受ける5つのメリット

保育士研修を受講し、研修を修了すると、次のようなメリットが得られます。

1. 給与アップが期待できる

保育士研修を受けることの最大のメリットは、キャリアアップによる給与アップが見込める点です。
主任保育士の下のキャリアステップ、副主任保育士・専門リーダー・職務分野別リーダーの役職に就くためには、それぞれに定められた経験年数や、必要な分野の保育士研修を修了する必要があります。(詳細は後述いたします)
研修修了後、役職につけた際は、「処遇手当金」として、月額最大4万円〜5,000円が支給されます。

2. 保育の専門知識を高められる

保育士研修は、乳児保育や障害者保育、食育・アレルギー対応など、保育に関するさまざまな分野の研修が設けられています。
自分の担当する分野や、興味のある分野の研修を受けることで、保育に対する理解を深め、専門性の高い知識や技術を身につけられます。

3. モチベーションアップにつながる

キャリアアップによって給与がアップしたり、保育士としてのスキルが向上したりすれば、保育に対するモチベーションもアップします。
高い意識を持って職務にあたることができれば、将来の目標もイメージしやすくなり、さらなるキャリアアップにつながるでしょう。

4. 就職・転職の際に有利

保育士研修を修了すると、修了した分野の知識や技術が身についていると証として、「修了証」が発行されます。修了証は役職のある求人に応募する際、その役職に就くために必要な条件を満たしている証になるため、転職の際有利です。

たとえば、乳児保育の研修修了証を持っている人なら、乳児園への転職の際、大きなアドバンテージになるでしょう。

5. 少ない費用負担で多くの実りがある

保育士研修の受講料は。実施主体である各都道府県が負担するため無料です。自己負担による実費といえば、テキスト代や会場までの交通費・食事代くらいでしょう。勤務先の保育所によっては、テキスト代を負担してくれるケールもあります。

保育士の仕事をしながら1分野15時間以上の研修を受けるのは、大変な負担がかかります。しかし、少ない自己負担でキャリアアップやスキルアップを狙えるだけでなく、転職の際も有利など、さまざまなメリットが得られるところが魅力です。

保育士研修とは保育士のキャリアアップと処遇改善のための制度

保育士研修とは、中堅保育士(おおむねキャリア3年以上)を対象に、職務内容に応じた専門性の向上や、処遇改善を図るために開始された研修制度です。

平成29年、厚生労働省は、これまで園長・主任保育士の2つしかなかった保育士の役職に、副主任保育士・専門リーダー・職務分野別リーダーの3つを新設。主任保育士から下の役職が増えたことで、初任後〜中堅の保育士もキャリアアップしやすくなり、保育士の離職率の大部分を占める「給与の安さ」が改善されることとなりました。

この新しい役職に就任するために必要なのが、保育士キャリアアップ研修です。保育士としてのキャリアや能力に合わせた研修を修了し役職への就任が認められた場合は、役職に応じた処遇改善が受けられます。

役職ごとのキャリアップの要件と処遇改善は次のとおりです。

役職
要件
処遇改善
副主任保育士
経験年数:おおむね7年以上
必要な研修修了:マネジメントほか、3つ以上の研修分野
職務分野別リーダーを経験している
副主任保育士としての発令を受ける
月額40,000円
専門リーダー
経験年数:おおむね7年以上
職務分野別リーダーを経験している
必要な研修修了:4つ以上の研修分野
専門リーダーとしての発令を受ける
月額40,000円
職務分野別リーダー
経験年数:おおむね3年以上
必要な研修修了:担当している職務分野研修
職務分野別リーダーとしての発令を受ける
月額5,000円

研修修了=キャリアアップ&給与アップとは限らない

処遇改善手当の加算対象人数には制限があります。
副主任保育士・専門リーダーは、園長・主任保育士を除いた職員の1/3、職務分野別リーダーは1/5です。つまり、1つの園で役職に就ける保育士の人数は限られているのです。
研修を修了した全ての保育士が、キャリアアップとそれに伴う処遇改善の対象になるわけではないということです。

処遇改善手当は、月額4万円、または5千円×加算対象の人数分が、交付金として毎月保育園に支払われます。その後、副主任保育士・専門リーダー・職務分野別リーダーへの給料に充てられますが、副主任保育士・専門リーダーへの手当に関しては、役職に就いた全員に満額支給されるわけではありません。

厚生労働省「保育士の処遇改善案について」には、以下のような留意事項があります。

“月額4万円の配分については、保育園等の判断で、技能・経験を有するその他の職員(園長を除く)に配分することができる。
ただし、月額4万円の対象者を一定数確保。”

引用元:厚生労働省「保育士の処遇改善案について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000146788.pdf

副主任保育士等への配分は、月額4万円満額を支給する職員を、処遇改善対象になる職員(役職についた保育士)数の1/2(端数は切り捨て)以上確保したうえで、そのほかの副主任保育士等に分配します。職務分野別リーダーへの配分(月額5,000円)は加算対象に人数以上確保し、残りは他の保育士の資金改善に当てることができます。※[注1]

満額支給対象以外の副主任保育士・専門リーダーへの分配額は、保育園全体の給与水準やほかの職員とのバランスを考えながら、保育園側が自由に決定しできるというわけです。

※加算額の20%の範囲内で行うことが条件、2022年度までの時限措置

[注1]内閣府:保育士等(民間)に関するキャリアアップ・処遇改善のイメージ(pdf)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/youshiki/h30-minaoshi.pdf

保育士研修8分野の研修内容について

保育士研修には、6つの専門分野別研修・マネジメント研修・保育実践研修の合計8分野があります。
研修修了には、1分野につき15時間以上の受講が必要です。職務分野別リーダーは担当の研修分野だけでよいので15時間、副主任保育士や専門リーダーは4分野の研修修了が必須となるため、計60時間以上の受講が必要ということになります。

研修をする講師は、指定保育士養成施設の教員、または都道府県知事に「研修内容に関して専門的な知識や経験がある」と認められた人です。

専門分野別研修

各専門分野に関して、リーダー的な役割を担う保育士を対象とした研修です。6つの分野に分かれており、このうち1分野でも研修が修了すれば、職務分野別リーダーに就任できます。

1. 乳児保育

主に0〜3歳未満児向け保育に関する理解を深め、児童一人ひとりの発達状況に応じた保育が行えるスキルを養う研修です。また、乳児保育の指導計画や記録の作成など、乳児保育に関する適切なアドバイスや指導が行えるような能力を身につけます。

2. 幼児保育

3歳以上の児童に向けた保育に関する理解・環境構成・児童の発達状態に応じた指導を学び、児童が持つ資質や能力を育むスキルを養う研修です。保育園から小学校へ進学する児童に向け、小学校教育との接続についても学習します。

3. 障害児保育

障害や障害児保育の環境(障害児の家族や関係機関)について理解を深め、障害児の資質や発達に応じた保育を身につけるための研修です。適切な障害児保育指導・計画の作成や、保護者への支援・連携について学びます。

4. 食育・アレルギー対応

栄養やアレルギー疾患に関する基礎知識(食事摂取基準値・衛生管理・調理の基本・三次食育家定格等)、食育計画の作成やその活用方法などを学び、食育やアレルギーに対する理解を深めます。

5. 保健衛生・安全対策

保育衛生や安全対策に関する理解を深める分野です。保育所における感染症対策や、事故の防止や健康安全管理についての教育・保育施設等における取り組み、事故発生時への備え、危機管理について学習します。

6. 保護者支援・子育て支援

保護者支援・子育て支援に関する研修です。保護者に対する相談援助の手引きた、地域資源の活用及び関係機関と連携した子育て支援、児童虐待の予防や子供の貧困に関する対応方法などを学び、理解を深めます。

マネジメント研修

主任保育士の下で、ミドルリーダーとしての職務を担うため、マネジメント・リーダーシップを身につけるための分野です。組織マネジメントや保育指針などへの理解を深め、組織目標の設定や、人材育成に必要な指導方法について学びます。副主任保育士になるために必要な研修です。

保育実践研修

子供に対する理解を深め、保育者主体で、言葉や音楽、物を使うといったさまざまな遊びや、環境を通じた保育を展開する実践的な能力を身につけます。
主な対象者は、保育現場での実習経験の少ない保育士試験合格者や、潜在保育士などの長期間保育現場で保育を行っていなかった人などです。

保育士研修の参加方法と実施主体について

保育士研修は、受講人数に上限があります。勤務先の保育所を通して受講申請を行う際、研究希望者が多い場合は、保育所側は研究参加者を決定します。
なお、研修の対象者は正職員に限りません。保育所で働いている契約社員・パート社員・派遣社員も、特定の条件を満たすことで研修参加者として受講可能です。

保育士研修には2つの種類がある

保育士研修には、「都道府県が実施する研修」と、都道府県知事によって指定された研修実施機関による「指定研修」の2つの種類があります。

指定研修は、市町や指定保育士養成施設、保育関連の研修実績がある社会福祉法人などの非営利団体が実施する研修のうち、各都道府県が保育士キャリアアップ研修として指定した研修が対象となります。
指定研修は自治体を通して各事業者へ告知されるとともに、都道府県の公式サイトに掲載されます。

受講対象の条件に当てはまる研修希望者であれば、各都道府県が負担により受講料無料です。ただし、受講対象者(補助対象者)受付後、定員に満たない場合、受講料1万5,000円から2万円程度で受講申請を受付ける場合もあります。

指定研修修了の際に発行される修了証は、都道府県の実施する研修同様の効力があります。

保育士研修の受講申請から修了までの流れ

まずは、都道府県実地の研修と指定研修のいずれから、受講する研修分野を選択します。受講申請は、通常勤務先の保育所を経由して行います。申込み先は各自治体の公式サイト、または日本保育協会などの開催案内を確認してください。受講が決定したら、研修会場にて1分野につき15時間(2〜3日)の研修を受けます。各研究分野には5項目の研修内容が決められており、その全てを網羅する必要があります。

なお、マネジメントは都道府県実地の研修、障害児保育研修は指定研修といったように、分野ごとに都道府県実地の研修と指定研修を分けて受講しても構いません。

研修終了後、研修修了可の評価を受けた研修修了者には、各研修実地主体から修了証が発行されます。
研修修了の評価基準は、15時間以上の研修全てを受講済みであることのほか、研修の内容を理解し、知識や技術、それを実践する際の心得などを身につけているか、研修受講後のレポート提出などを通して確認します。
修了証は研修修了した分野単位で発行され、全国各地で効力があります。有効期限はありません。

また、修了証の発行とともに、研修実地主体によって、研修修了者の情報管理として、保育士登録番号・氏名・生年月日・住所などを記載した研修修了者名簿が作成・登録されます。

【まとめ】保育士研修はキャリアアップやスキルアップだけでなく転職にも有利

保育士研修は、保育士のキャリアアップやスキル向上に必要不可欠な研修です。勤務先の保育所によっては、研修を修了しても役職につけない場合もあります。しかし、研修終了で交付される修了証が「専門性の高い知識や技術を持っている」証になるため、転職の際に大きなアピールポイントとなります。
また、保育の関するさまざまな知識・技術を磨いていくことで、職務に対するモチベーションアップにもつながるでしょう。

修了証は全国どこででも効力がありますので、引っ越しなどで転職する際にも有効です。

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